Maid Princess
SHOCK !


遭遇!


 満天星国の政庁は別に城という構造ではないが、何人かはそこを城と呼ぶ。まぁ、藩王が勤めているのだから城でも問題はない。そして城ということはメードが居て、当然ながらメード長もいるということである。
 ということを若干忘れがちなのは働いている本人たちもメードだったりするからなのだが、まぁそんな状況なのでメードには見慣れているしそうそう新しいメードさんが来ても驚いたりはしないのが政庁職員というものであった。

 そんな職員の中にはもちろん国民の代表としてPLとして働く者達もいる。その中の二人、ホーリーと津軽はへーこらへーこら歩いていた。ようやくレンコンがアイドレスとして開発が終了したところで、取材やら何やら何やらで泥だらけなのであった。
 で、その報告とかをしようと二人連れ添って登庁中である。自家用ピケ置き場からここまで歩くだけでも意外と疲れるなぁとか取り留めのない話をしながらようやく入り口まで来た。
 あー後はエレベーターで上に行くだけじゃー、頑張りましょうねー。と思っていた二人の前に、人だかりが現れた。いつもならば立ち止まってその中に参加しようとも思うのだが、今は疲れていた。何だよー邪魔だよーどけよーとか思いつつかきわけて進んで行こうとした。
 したのである。
 そしてできなかった。

 二人の目はその人だかりと同じく、一点に集中していた。


 そこに居たのは、一人の女性。彼女を形容する言葉は一つしかなかった。

 即ち、プリンセス。

 その身に纏う高貴な雰囲気と、その輝かんばかりの笑顔は間違いなく高貴な血族に列するものであると誰もが信じて疑わなかった。
 と、同時に、誰もが思った。

 誰っ?!!

 あまりに高貴すぎて、高貴すぎて、絶対王族の誰かだろうとは思うのだが、藩王にはまだ娘は居ない。というかいたらいじり倒されている。
 外戚から呼んだとかそんな話は聞いていたらオンサさんに藩王がぶっちされている。
 外遊中の誰かであったのならば、もっと遅い時間にもっとお供のものを連れているはずだが、彼女は一人である。
 つまり、そのような身分の人間がこんな時間にここにいるということはないのである。 では、目の前に居る人物は何者なのか?
 人だかりのうち半数はこの疑問を解消するためにここにいるが、時間が経てば経つほどその疑問の答えは遠くなっていった。

「んー、何泥だらけでたちすくんでんすか」
「あ、里樹さん」

 そこに通りがかった執政。最近温泉の本とメードの本ばっかり読みすぎて若干頭が湯立っているのか、至極眠そうである。いや、いつものことだが。
 そうだ、いくら最近ヒッキーで外に出ていることが稀だとしても執政である。彼女が何者か知っているのではないか。ホーリーと津軽の二人がその思考にたどり着くよりも早く里樹は手を掲げて。

「あー、もう来てたんすね。今日からお願いしますー」
「はい」
「「軽っ!!」」

 皆ががびーんと縦に青い筋が入った顔をしている間に、プリンセスらしき人物はさっさと政庁の中に入っていってしまった。
 そしてそのショックから皆が立ち直る前に、里樹はホーリーと津軽の方を向き、

「あの人新しいメード長だから、スケッチよろしく」
「あーはい……って、」

「「メェド?!!」」

 その場に居た全員の叫び声で政庁が少し揺れた。
 しかしてこれは、この城を揺るがす事件のまだほんの一歩だったのであった。





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