- 満天星国 -




《輸送用オート三輪のメカニズム》

 オート三輪はエアバイク・らうーるカーをベースに輸送能力の向上を目指して開発された車両である。 内部構造は基本的にはエアバイクの反重力装置が三基になっただけのシンプルな構造で既存技術を多く使い、 容易に生産・整備できる経済的にも優れたものである。
 動力源は燃料電池、飛行装置にニュートン式反重力装置。フレームは反重力装置を増設したことによるレイアウトの変更と、 大きな荷物を積むことをあらかじめ想定したシンプルで頑丈な構造になっている。初期はエアバイクのように吹きさらしだったが、 やがて屋根や幌の付いたクローズド・ボディになった。荷台が標準的に装備されるようになり、後には座席やトランクを設置した乗用車も登場した。

【燃料電池】

 動力源はらうーるカーと同じ燃料電池である。
 燃料電池自体はらうーるカーと同一のものが使用されているが、使用電力の増加に伴い燃料タンクは大型化している。満天星国では水素燃料の安全性強化と取り扱い簡便化のために、水素燃料のカートリッジ化が行われており、オート三輪で使用されている燃料パックもらうーるカーと同一規格のものが使用されている。もともと満天星製の燃料電池には、この燃料パックを複数個取り付け可能な構造となっており、オート三輪はその数を増やすことで連続稼働時間をらうーるカーと同等に維持している。

【ニュートン式反重力発生装置】

 ニュートン式反重力発生装置は、その名の通り重力を打ち消し、空中に浮くために必要なエアバイクの心臓部である。 万有引力の法則により質量の均衡するAとBの間では重力は打ち消しあう。ニュートン式反重力発生装置は、 重量に比例する引力を増すために、発生源となる物質を圧縮して小さくして使用している。 また重力発生源には精製燃料を生産する過程で出た、圧縮された廃棄物を利用している。
 オート三輪に搭載されている反重力装置は、らうーるカーと同一のものが使用されている。 重い荷物を積んでも快適に動ける出力を得るため、オート三輪にはらうーるカーよりも多い三基の反重力装置が搭載されており、 オート三輪という呼び名の由来になっている。

【スラスターおよび姿勢制御装置】

 加減速は主にスラスターで行われている。研究開発中の重力制御による推進装置の導入も検討されたが、安全性の検証が十分ではないこと、 新技術の導入による取得コストの増加などの理由により採用は見合わされた。 また姿勢制御装置としてリアクションホイールが装備されている。リアクションホイールは回転するホイールの反作用を利用して、 ホイールの回転と逆方向に機体を回転させる装置である。それぞれ垂直なX・Y・Zの三軸に設置して力を合成することで 任意の方向への力を発生させることができる。しかし速度が速く運動量が大きい場合は力を打ち消しきることができないので、 あくまで停止状態・低速状態において使用され、限界以上の力が加わった場合には姿勢制御スラスターが作動する。

【フレーム】

 エアバイクのフレームを加工したものでは、強度に不安があることや輸送力に制限が掛かるため、 フレームは製作と強度確保が容易なはしご型フレームが採用された。 堅牢なフレームをつくり、そこに別に製作したボディを乗せるセパレートフレームと呼ばれる構造で、 ボディを載せなくても物理的には飛行可能である。 (保安部品が一部ついていないので私有地以外では違法。保安部品だけを無理やりくっつければ公道も走れるがあまり意味はない。)

【運転席およびボディ】

 エアバイクとの一番の違いは、運転方法が丸型ハンドル式(ステアリング)になったことである。
 これは重い荷物を載せることにより体重移動での操作が困難になることと、運転者の疲労を減らすためである。 丸型ハンドル式へ移行したことにより車体の微細な操作が可能になり、狭い場所での移動や低速移動も容易になった。 運転方法が変わったため、エアバイクでは運転の邪魔になるため取り付けられなかった屋根やドアに覆われたクローズドボディなった。 シートもまたがって乗るサドル型から、座って乗るベンチシート型になった。

【アビオニクス】

 電子機器はオート三輪が安全で快適な飛行を行うために必要不可欠なものである。
 基本的にはらうーるカーから継承されたシステムがそのまま使用されているが、車体の大型化や形状の変更、 重量バランスの変化に対応した調整が行われている。 衝突回避システムなどの一部の機器では、車体を自動制御して事故を未然に回避するプリクラッシュ・セーフティ・システムが導入されているが、 基本的には人間の操縦が必要なシステムとして設計されている。これはシステムを利かせすぎることによる運転への過干渉を防ぐためと、 全てを機械に任せきってしまい人が安全に注意を払わなくなることを防ぐためである。


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【運転席およびボディ】

 運転席はバイクの周りを車体構造が覆ったRBのコックピットを小さくしたような構造になっている。 このためボディは大型化したが居住性は向上した。普通の車と同じような運転席にすることも検討されたが、 現在普及しているらうーるカーと同じ感覚で運転できるように、このような形になった。 車体重量が増え純粋な体重移動ではコントロールが困難なため、運転席内の体重移動を感知して機械で増幅している。