■ 生活設備 ■


“ フォート・オブ・ジャスティス”では人員の長期滞在が予想されることから、生活設備は質的向上を目指した設計がなされている。元より、艦隊の収容施設に多くのスペースが割かれているため、面積的にはそこまで広いわけではない。しかし、それでも閉鎖された空間で乗員の受ける精神的、肉体的負担を可能な限り減らすため、配慮がなされている。




■ 居住区内の施設 ■


 居住区内の施設は、主な施設としては食堂、ベッドルーム、シャワールーム、メディカルルーム、トレーニングルーム、リラクゼーション施設がある。他に基地全体に関わりのある施設として、擬似重力システム、循環システムがある。万が一の場合に備え予備動力を備えており、他の区画が正常に機能しない事態に陥った場合も乗員の生命維持を行えるようになっている。また、この基地独自のデザインの一つとして居住区の天井が高く設計されている。これは後述する空気循環システムの他、閉塞感からくる乗員の心的負担を軽減することを目的としている。




■ 食堂 ■


 居住区内において、一部屋の面積が最も広い施設である。最大で基地内人員の半数を収容可能。この食堂のメニューは宰相府藩国の施設である事を反映し、西国風が基本となっている。ただし、近年、帝國内諸藩国から補給士官や犬士等人員派遣を受けるケースが増加している事から各国の料理をメニューに取り入れる試みが行われている。
 隣接する調理場では、火災防止と、空気中の酸素消費量を抑える観点から、化学的な燃焼を伴う火ではなくIH調理器具を用いている。




■ メディカルルーム ■


 地上の医療施設におけるICUと同等の設備に加え、宇宙酔いなど重力の変化による疾病、宇宙放射線による被曝の治療など、宇宙特有の病状に対する治療設備を備えている。隣接区画には入院設備も整えられており、長期間に及ぶ治療も可能となっている。




■ トレーニング施設 ■


リラクゼーション施設と同じ擬似重力下区域に存在しており、かなり大規模のトレーニングジムとなっている。 また射撃場も隣接おり、戦闘の可能性がある作業員が義務付けられている無重力下での戦闘訓練他、擬似重力下の射撃訓練を行うことができるようになっている。




■ リラクゼーション施設 ■


長期間生活する施設従業員の為、要塞内には多めのリラクゼーション施設が備わっている。 これらの設備は擬似重力下区域に存在おり、精神的・肉体的健康に配慮した物になっている。 分散して配置してある、クラゲとBALLS型マシンの泳ぐ小規模水槽がとても人気が高い。




■ 疑似重力システム ■


 基本的に、地球上の生物は重力の無い環境で長期間生きられるようには出来ていない。特にカルシウムを主体とする骨組織によって体を支える動物の場合、無重力環境下においては骨組織からカルシウムが流出し、骨粗しょう症と同様の状態に陥る。それを避けるため、居住区を含む基地の一部区画は一定速度で回転させることによる遠心力を利用し0.9G程度の疑似重力を発生させている。また、基地に滞在する人員には一定時間の運動とカルシウム流出を防ぐための薬(サプリメント)の服用が義務づけられている。




■ 循環システム ■


 当基地内における生命維持機能の根幹を成す、重要なシステムの一つである。大きく分けて2つ、水と空気に関してそれぞれに循環システムが設けられている。水資源については再処理システムを設け、95%を超えるリサイクル率を達成しており、なんらかのトラブルにより長期間補給を受けられない状態でも持ちこたえられるようになっている。一方、空気については、酸素供給システムを備え、洗浄フィルターを用いて空気環境の維持を行うとともに、居住区内限定ではあるが先述の居住区の天井の高さと補助的なファンの使用を組み合わせることで擬似的に大気中における空気の循環を再現している。また、居住区内の一区画を農場バイオーム区画とし、循環システムの一環に組み込んでいる。これは、穀物を主体とし、他にタンパク質の補給源となる大豆、各種野菜を水耕栽培で育成するもので、水質の維持と酸素供給、食糧供給の補助に役立てられている。





■ 整備施設 ■


 “フォート・オブ・ジャスティス”は基地自体に移動能力を持つとともに、無人機とレーダーを内蔵した岩塊による空間移動技術妨害能力を持っている。そのため、一部の護衛艦を除いては戦闘宙域までは部隊を収容した状態での移動が望ましく、従ってその内部スペースの多くが宇宙艦船及び各種I=Dの収容、整備施設にあてられている。そして、その整備施設は宇宙艦船用のドックと各種I=D、大型I=D用にそれぞれ設けられた整備ハンガーによって構成される。このように多岐に渡る整備施設を備えているのには、これが宰相府の施設である事による部分が大きい。宰相府藩国の宇宙戦における主力I=Dであるアトモス、フェイクトモエリバー3、そして大型I=Dであるエチオピア、灼天は言うまでもなく、帝國全体で見た時に宇宙方面の一翼を担うであろう剣舞天使、ベルクール等の各種I=D、そして冒険艦や各種宇宙艦船まで、幅広い兵器の整備を想定した設備となっている。

  当施設は原則的に微小重力下での整備となることや、相当数の整備を行う必要性から多くの部分に整備員を支援するための設備が導入されている。具体的には輸送されてきたI=Dを宇宙艦船から搬出、ハンガーへ設置する際には基地内に設置されたレールによって運搬を行い、ハンガー到着後も基本的な整備、及び機体チェックは各ハンガーに設置されたロボットアームによって行われるなど、可能な限り整備員の負担を減らし、ヒューマンエラーを少なくするよう工夫している。特に、ずらりと居並ぶアトモスの群れを大量のロボットアームが一斉に火花を上げつつ一糸乱れぬ動きで修繕してゆく様は壮観であろう。これは、宇宙艦船用のドックにおいても同様である。しかし、これは整備員の技術を軽視しているわけでは決してない。機体の微妙な調整や最終的なチェックは必ず整備員自らの目で行い、整備を完了する。人と機械がそれぞれ補い合い整備を行っているのである。

 また、teraから遠く離れた場所で多岐に渡る兵器の整備を行う必要性から、これまた多岐に渡る整備に必要な補修用資材、予備パーツ類が必要とされた。そのため金属部品など一部の基礎的なパーツに限ってではあるが生産設備を備えており、必要に応じて生産を行えるようになっている。
この事は、当基地の整備能力を維持し、また底上げする上で目立たないが重要な役割を果たしている。なお、ここでの生産にかかる資源は原則的にはteraからの補給によって賄われるが、状況によっては当基地周囲に存在するデブリを資源として流用することも可能である。

 加えて、整備を行う機体の中に一部TLOに該当する機体が含まれる可能性があるため、万が一の場合に備えた物理的な隔離機構や、TLOに関する情報の流出を防ぐための整備情報の管理などセキュリティには特に重点が置かれている。

 さらに、この基地の整備施設はその大量整備能力と共にもう一つ、大きな特徴を備えている。それは、この基地の備える情報統合システムへの導入を行う、という機能である。これには、かつて初心級宇宙空母の開発時に用いられた情報処理システムをこれまでの運用データを元に再構成し、情報処理能力の向上を図ったものが用いられている。しかし、これは初心級宇宙空母の持つ情報処理システムと競合するものではない。本情報統合システムにおいては、戦闘宙域全体をカバーする、より広い範囲での情報統合を主眼に置いているのである。各機体の整備時に機体性能に関する情報を収集することで機体速度、進行方向、残り燃料量、機体の損害状況など、戦闘中においても並行してより精度の高いシミュレーションを行い、それと敵味方を含めた各機の位置情報を統合することで基地に所属する部隊全体に対して協調運動性能の向上を図っているのである。




■ 自給生産工場 ■


“フォート・オブ・ジャスティス”は超巨大戦闘要塞であり、いざ戦いとなればその戦闘規模に比例した莫大な物資補給を必要とするものの、それを常に外部から得られるとは限らない。そこで内部に工場が設置されており、同じ区画にある軍用倉庫内の貯蔵資源を使った軍事物資の製造が可能になっている。未加工のまま運ばれた資源から兵器の予備パーツや弾薬への加工可能であり、工場内部が"作業場"に近い融通の効く体制になっている為、専門施設より効率は劣るものの柔軟性の高い加工体制を保有している。これらの工場によって"フォート・オブ・ジャスティス"は戦時における高い整備力・継戦能力を保有することができている。
平時においてはその柔軟性から生活必需品の修理や加工を行うことができるが、その運用コストを考慮して活動を停止させる場合が多い。戦時の備えの為保守点検は欠かさず行われてるが、当初より施設そのもの総合的耐久性を確保している為、多少雑な管理でも設備を稼動させられるようになっている。
戦闘時の物資輸送も考慮されており、幾つかの工場設備の完成品が集まるターミナル毎に格納庫への直通輸送レールが備えられている。これは加工前の資源の運搬にも活用されており、円滑な運搬を行える他、倉庫を経由することなくそのまま工場に運ぶ等融通の効く運搬体勢となっている。尚倉庫・工場・レール・運搬状況は全て閉鎖ネットワークで参照・伝達が可能である。




■ アトモス格納庫 ■


 宰相府藩国の傑作無人兵器アトモスには専用格納庫が設けられている。この格納庫は無人兵器専用という利点を生かし、パイロットに対する配慮を排除したことで機体の配置を機械化によって管理し、整備士達は部品調達以外で大きく動くことなくアトモスの整備を行うことができるようになっている。さらに整備士配置箇所に到達する前のアトモスはロボットアームによる大掛かりな破損箇所の簡易修復を施されるようになっており、整備士達はその修復作業の仕上げと点検、そしてチューニングを乗り込み式の整備用工作機と工具によって行うのが基本業務となっている。これらの設備動作の動力は要塞から供給されているが、有事の際には自動化された工程をある程度停止させることで、隣接ブロックの電源で動かすことも可能である。




■ I=D格納庫 ■


宇宙で使われるI=Dは大型になる傾向が強いため、格納庫もそれに応じて巨大な作りとなっている。その大きさから来る整備士の移動の手間を削減する為に無重力下用の小型推進装備が配られており、目的の機体に即座に辿り着けるよう、格納庫に繋がる出入り口も多めに作られている。(機体の配置箇所は要塞内の閉鎖ネットワークによって通達される)これは機体の発着場に隣接が故に敵の侵入路になりやすいため、作業員の退避をできるだけ迅速に行う為の配慮でもある。これら手間のかかるI=Dを迅速に整備する為、艦船用ドックからレールが繋がっており、I=Dそのものや部品を自動制御で運搬できるようになっている他、アトモス格納庫でも使用されている乗り込み式の整備用工作機と、それに推進器を取り付けた型を多数用意している。




■ 宇宙艦船ドック ■


 宇宙艦船は開発は急速に発展し、大型・難整備化の一歩を辿っている。そのため将来に渡って長き運用される要塞の艦船ドックはあらゆる艦船に対応できるよう、全ドックで皇帝座乗艦"暴風"の整備を可能な水準を保つことが目標とされ、主要港はその座乗艦をベースに想定した新型と付随艦隊を整備可能なスペース、設備の導入規模が建築基準とされた。これらを達成する為に宇宙港事態は巨大な箱型の空洞となっており、必要に応じて壁を作りあげ固定することで艦船の停留・整備設備を設置する形を取っている。

 この宇宙艦船ドック入り口を"上"とし、箱の"底"にあたる部分は要塞内部へと繋がるターミナルとなっている。乗組員・作業員の出入り口が複数と、自給生産工場へと繋がる物資搬入出用のレール路線、アトモス専用と通常用の双方を含めてI=D格納庫に繋がるレール路線が一定の間隔でまとめて備わっている。このレールによって機材・物資の搬入が極めて効率的に行われるようになっている。

 そしてこの艦船ドックはI=D格納庫に繋がるカタパルトの他に外壁を破る以外に敵が侵入する箇所となる為、もっとも厳しいセキュリティと隔離機構が備わっている。このセキュリティは物理的な管理の方、情報管理でも同じくであ。戦場情報管理システムとの連結を完全に調整するのはこの要塞内の停泊設備であり、情報連結が可能な設備が整えられているのである。これらの設備を管理できるものは選ばれた者達に与えられる特別な作業員管理チップ(要塞に乗り込む全ての者が着用を義務付けられている認証システム)が揃った状態でなければ操作できないものの、万が一を考えて情報網の物理的自爆システムが整っている。これは作業員出入り口・各レール路線も同じであり、格納庫側からだけではなく、繋がった先と、中央管理室からの指令で行うことが可能である。そして最終的にドック内にTLOを積載することも想定されており、内部で極めて深刻な事態が発生した時の最終手段として、中央司令室からの指令でドックそのものをパージすることも可能である。

 これらの優れたセキュリティ管理故に、整備士は安全に仕事に打ち込め、長旅を終えた船のスタッフは安堵を覚えることができるのである。そうしてスタッフ同様様々な宇宙艦船にも休息が与えられるのである。この休息中に船が最大限の戦闘能力を発揮できるよう、宇宙艦船の整備機材はI=D格納庫よりもさらに充実している。様々な艦船に対応する為に、時に自給生産工場で整備器具を新造することも可能であり、オーダーメイドの機具・補修パーツによって超規模な宇宙港並の整備力・収容力を保有することが可能となっている。